第7章 白波
【…身の安全は前半のグランドラインではあまり心配していないが、何かあればすぐに呼べ。】
『うん。わかった。』
【身体には気をつけろ。】
『うん。』
私がそう言うと、おじさまの顔をした電伝虫は少しだけ微笑んで眠った。
私も受話器を置くと、背もたれに寄りかかり、少しだけ目を閉じた。
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久々にカラの声を聞いた。
無理をしたと聞いて肝を冷やしたが、思いの外元気にしているようだ。
話を聞く限りトラファルガー達との関係も悪くはないらしい。
俺は誰もいない城を歩きながら1人ワインを煽る。
この城はこんなに広かっただろうか。
…カラが居なくなってからというもの、城が一段と広くなったような感覚が抜けない。
俺は出て行ったままの状態のカラの部屋を軽く見回す。
…なんとも殺風景な部屋だ。
とても年頃の娘の過ごす部屋とは思えない。
『っ痛、、、おじ、さま、、!』
「!?どうした、」
『…痛い……お腹の、傷のところ、、痛い!』
「!…見せろ。」
…初めてカラが痛みを訴えた時、服を捲った時に見えた白いアザ。
俺はあのアザが見えた時、時が止まったような、足元が崩れ落ちるような感覚に陥った。
紛れもなく拍鉛病の証のアザ。
…カラが拍鉛病の存在を知った頃からか、カラの部屋の荷物が激減した。
好きだったはずの本も、ぬいぐるみも、集めていたコインも。
すべて海へ捨てていた。
日々の生活もただ生きているだけ。
未来への楽しみを見出すことをしなくなった。
そのカラが、、、また以前のように弾けた声で語る様は俺の中の何かを揺さぶる。
「トラファルガーに枷を外して貰った後、お前はどこへ飛び立つのだろうか。
短かった寿命がお前を縛ることがなくなれば、お前はどこへ向かうのだろうな。」
この島では珍しい。
純白の羽を持つ鳥を眺めながらそんなことを口走った。
あわよくば、二度と囚われることなく飛べる世界へ行けるようにと願いながら。