第7章 白波
「オイ、ベポ、、そろそろ戻れ。」
「アイアイ!カラ、また明日来るね。
早く元気になってね!!」
私はにこりと笑ってベポに答えた。
ローはベポと入れ替わるように部屋に入り、椅子に座る。
「…疲れてないか。」
『…』
私は無言で頷く。
そうか、とこぼすように呟いたローの顔にはひどい隈があって、それに、、、いつもよりも小さく見える。
私はローの手を引っ張って、手のひらに文字を書こうとした。
「なんだ。
描かなくても俺は読唇術くらいできる。
言ってみろ。」
ローはそう言って布団から出した私の手を布団へ引っ込めた。
私はパクパクと唇を動かす。
『(ローの方こそ。随分疲れてるみたい。…もしかして寝てないの?)』
「…いつもよりは寝てないが、別に問題ない。」
『(いつもよりって、、、ダメよ。ちゃんと寝ないと。)』
「うるせぇ。さっさと問診するぞ。」
…ローって自分のことを全然大切にしない。
このままじゃ、いつかパンクしちゃいそう。
治ったらどうにかして栄養と睡眠はちゃんと取れるように頑張ろう。
「今、痛むところはあるか。」
『(痛みはないわ。)』
「違和感は。」
『(…ある。
違和感、というか、、、ずっと寝てたから当たり前だけど、身体が動かしにくいのと、少し息苦しい。)』
「…息苦しいのはどんな感じにだ。」
『(…なんだが、胸の上に重たいものが乗ってるみたいに苦しい。)』
「…左だけか?」
『(ううん。両方。深く息が吸えないの。)』
「………いや、間違えても深呼吸なんかしようとするな。」
ローはそう言いながらノートにカリカリとメモを取り、私に顔を向けた。
「…経過としては悪くない。
片側だけに異常があるならそれは左肺の破裂が原因だが、両方なら大丈夫だ。
聞いたところ長いこと寝てたおかげで色々な部位の筋肉が固まってるだけのようだ。
肋骨を動かす筋肉もな。
明日から指先の筋肉から動かしていけばいずれ戻るだろう。」
『(そう。よかった。)』
私はローに向けてにこりと笑った。
「…カラ、すまなかった。」