第7章 白波
それからまた2日が経った。
すっかり元の体温に戻り、血色が良くなって唇や肌が色づいてきた。
そろそろ目覚めるはずだ。
そう言って今日もキャプテンは部屋に籠る。
結局まともに寝たのはあの日だけで、それからはまた逆戻り。
目の下の隈はさらに濃くなって、病人のような顔色。
医者の不養生とはまさにこのことだ。
「はぁ。」
俺は今日も塩味のキツイ干し肉を噛みちぎって米と共に流し込む。
そろそろカラの飯も恋しい。
ー
ーー
ーーー
ーー
ー
『…っ、』
「!カラ?」
今、僅かに瞼が動いたような、、、
「カラ、聞こえるか、カラ!
聞こえたら俺の手を握れ。」
カラの右手を握り、反対の手で軽く肩を叩く。
点滴をしているとは言え、痩せて骨張った右手の様子に胸が痛む。
きゅ…
「!!カラ!」
本当に微かだが、俺の手を握り返したカラ。
もう一度表情を伺うと、薄く目を開けていた。
「はぁ………無茶しやがって…」
俺はドカリと横の椅子に座り、能力を駆使して呼吸器を外し、酸素マスクに切り替える。
意識のある状態での呼吸器の装着は苦しみを伴う。
まだ朦朧としているうちに取ってしまうのがいいだろう。
『…ぁ、、、っ、』
「まだしゃべるな。まずは呼吸だ。
長く眠っていた。全ての筋肉が落ちている。
息を吸うことはあまり意識しなくていい。吐くことだけに集中するんだ。」
そう言うとカラは小さく息を吐く。
俺は布団の上からカラの胸がしっかり上下しているのを確認した。
「よし。
…大分肺が縮んでる。ゆっくりリハビリをしていくぞ。
間違っても起き上がるな。」
『…』
カラはパクパクと口を動かして何かを訴える。
俺は唇の動きから内容を推測する。
「あぁ。ペンギンなら無事だ。
塞ぎ込んではいるが、、、連れてきてやろうか?」
『…』
カラが微かに頷いたのを見て、俺は部屋を出た。