第7章 白波
【…何の用だ。】
…相手が目の前にいるわけではない。
ただ、電伝虫の向こう側にいるだけ。
それだけだというのに、手に汗が滲み、あの男のものではない、ただの電伝虫の真似事の鋭い目から自身の目が逸らせない。
「…医者として、2つ、報告すべきことがある。」
【…聞こう。】
医者として、
そういうと、俺の意図を理解したように少し声色が柔くなった。
「まず、、、最初の治療を行った。
たまたま訪れた島で拍鉛病の真相を知る優秀な医者と出会い、ソイツから設備を借りることができた。
この機会は逃すべきではないと判断し、お前との契約よりも患者の治療を優先した。
1番状態が良くなかった、肺の拍鉛を取り除いた。」
【…そうか。】
「…悪かった。事前に連絡もせずに勝手を働いた。
何しろログが溜まる日数が限られていてな。」
【いや、構わん。
医者の最善ならば俺はそれに従う。】
鷹の目はほんのわずかだが、安堵の表情を見せた。
だが、本題はここからだ。
「…ふたつめだ。
患者の術後のケアは完璧とは言えなかったが、船でも十分できる程度の回復は遂げたため、俺たちは島を出た。
そこで、急な嵐に見舞われた。」
【…】
「患者は船室からは出さず、航海士の補佐をしていた。
だが、、、俺のクルーが1人、海へ落ちた。」
鷹の目はもう、俺が言わんとしていることが分かったのだろう。
険しい目つきを下にむけた。
「アイツは覇気でそれを察知し、荒れた海へ飛び込んだ。
…2人は無事船へと帰ったが、カラの肺はそもそも圧力に耐えられるような状態ではなかった。
カラの肺は一部が破裂。一度吐血した。」
【…】
鷹の目の表情、感情は全く読めない。
電伝虫越しというのもあるが、それを抜いても、わからなかった。