第7章 白波
ーガチャ
「キャプテン!カラは!?」
「…生きてる。命には別状はない。
ペンギンはどうだ。」
「今ベポが暖めてる。
一度は目が覚めたが、疲れたのかすぐ寝ちまった。」
「…そうか。」
部屋の隅に目をやると、毛布とベポに包まれたペンギン。
心臓が止まっていた。
…本当に危ないところだった。
俺はドカリとソファに座った。
「…キャプテン、2人とも、、どうしたの?」
ペンギンを暖めていたベポがそう言う。
俺は迷ったが、本当のことを話した。
「…ペンギンがなんらかの原因で船から落ちて、それにいち早く気づいたカラが海へ飛び込んだ。
…2人とも命に別状はない。が、カラの肺は一部が破裂。
長期間の治療を用する。」
「え、、そん、な、、、、、」
ベポは力が抜けたように、握っていた毛布を床に落とした。
そして、目に涙を浮かべて悲痛に話す。
「…ボクのせいだ。
ボクが、ボクが早く嵐を予想できなかったから…
ボクがペンギンを1人にしたから…」
ボロボロと涙をこぼしながらより強くペンギンを抱く。
…だから言うか迷ったんだ。
「ごめん、ごめん、、、ペンギン、カラ、、本当に、ごめ、グスッ、ごめん…」
…俺はそんなベポが見ていられなくて、ベポの前に甘いココアを置いてカラの眠る医務室へ戻った。
…ベポのミスじゃない。
俺の失態だ。
俺の力不足が招いた結果だ。
ベポは悪くない。
俺がアイツを航海士に任命してから、もしアイツが予想し得ない天候によって命を落としても構わないと、とうに腹を決めてる。
航海術に置いて、全幅の信頼をおくアイツが予想できないことを、俺が予測できるはずはない。
そんな俺がアイツを責める道理はない。
だが、俺がそれを伝えるのは違う。
俺では意味がない。
それではただの傷の舐め合いだ。
結局、俺は今回の件は全てカラに助けられただけだ。
なんてザマだ。
俺は握った拳を医務室の壁に叩きつけた。