第7章 白波
「え?」
風が吹き荒れ、雨と波が体を打ちつける。
まだ波はうねり真っ黒に染まっている。
【ペンギンが船から落ちた!】
「っ!うそ、だろ!!!」
カラの言葉をやっと理解した俺は、身体中の毛穴から汗が吹き出すような感覚に陥った。
「っ!キャプテン!!キャプテン!」
「なんだ!」
今まで俺たちを助けてくれた。
今まで彼にかかれば不可能なことなんて無かった。
「ペンギンが船から落ちた!
どうしよう!キャプテン、助けてくれ!!!」
「っ、なん、だと、、?」
キャプテンは船から暗い海を覗き込む。
もちろん、彼の姿などは見えない。
ペンギン。
ずっと、物心ついた時から隣にいた。俺の大切な幼馴染。
いつも一緒にいた。
俺の親友。
「っクソ!何も見えねぇ!!」
「ペンギン…」
嗚呼、キャプテンが悔しそうに顔を歪めている。
こんな顔は初めて見る。
いつものように、ため息をつきながら助けてくれるキャプテンはここにはいない。
そうだ。
彼は能力者だ。
海の前では、俺より無力。
「…ペンギンは本当に落ちたのか。」
キャプテンは真っ黒い海を見ながらそういう。
「カラが、急に走って出てきて、、、ペンギンが海に落ちたって、必ず連れて帰るからローに伝えろっていって、、、
っ、そうだ!カラも飛び込んでいって帰ってきてない!!」
「っなんだと!
こんな海に飛び込んだのか!?」
「あ、あぁ。」
無茶だ。
こんなに荒れた海。
いくら強くて運動能力が優れたカラでも、、、人1人抱えて泳げるわけがない。
「…アイツ、まだ泳げる身体じゃねぇぞ…」
「…!」
最悪だ。
このままだと、
ペンギンどころか、カラも、、、
俺たちの中でこの海の中を泳いで2人を探し出して連れ帰る、なんて芸当できる人間はいない。
何度考えても行きあたる答えは、、、
2人の死