第6章 白銀【2】
現実離れしたような景色を見たからか、ふわふわとした気持ちのまま、船へと帰ってきた。
そこにはまだ眠たげな目をした3人がいて、出校準備を整えていた。
ドクトリーヌは見送りに岬まで来てくれて、私は甲板からお別れをした。
『ドクトリーヌ、短い間だったけど、ありがとう。』
「ヒッヒッヒ、何、アタシは寝床を提供しただけさ。
せいぜいあの小僧に治してもらうんだ。
次ウチに来るときにゃ、完治した時さ。」
『えぇ。また、』
「あぁ。また、」
「…世話になった。」
「ヒッヒッ、お前にゃまだ話すことが沢山あったが、あの小娘と会う時に取っとくよ。」
「そうか。」
ローとドクトリーヌはそれから少しの間、お互いに言葉は交わさず、視線だけを交わした。
「キャプテン!出港準備できた!いつでも出せるよ!!」
そんな中、ベポの声が響くと、ローは視線を前の海へと移した。
「…出港だ。」
「「「アイアイ!!!」」」
ローは振り返ることなく、船首へ歩く。
私は一度だけドクトリーヌに手を振って、ローの後ろへ並んだ。
白い吐息は空へと流れ、海風とともに遠くへ消えていった