第6章 白銀【2】
私はそれを受け取ると、黙って袖を通す。
なんだかんだ言ってずっとベッドの中だったから、外に出れるのは嬉しい。
暖かいコートを羽織り、ブーツを履いた。
相変わらずドクトリーヌは薄着だ。
『わっ!』
ローが私を横抱きにして玄関へ向かう。
『ロー、下ろして。』
「だまってろ。」
『自分で歩けるし、重いから!
熱も下がったし、大丈夫よ。』
「…」
無視。
「さ、行くよ。」
ガチャリ
ドクトリーヌは扉を開けた。
一気に冷たい空気が流れ込む。
ずっと布団にくるまっていたからか、数日前よりも何倍も寒く感じる。
私は体を小さくしてふるりと震える。
ローの私を包む手に力が入ったのがわかった。
ドクトリーヌは迷いなくスタスタと足を進める。
ローは私を抱えたまま、その後ろを歩く。
少し歩くと、木が少ない、開けた場所に出た。
まだロッキードラムと呼ばれる、あの高い山?に隠れて日は挿してない。
「日が出るまで待ちな。」
そう言って彼女は切り株の上に腰を落ち着けた。
日が登ったら何があるのかな…
10分もしないうちに、山から太陽が顔を出した。
空気が澄んでいるからか、いつもよりも明るく見える。
『わぁっ!』
「…これは。」
日が刺すと、何も無かったはずの空気中がキラキラと輝いている。
星が空から降ってきたみたい。
ローは私を地面に下ろしてくれた。
小さな光が沢山舞う。
白い世界の中に、宝石のようにキラキラと輝く光。
とても綺麗。
「ダイヤモンドダストか。」
「そうさ。空気中の微細な氷の粒が太陽の光を反射して輝く。
この寒さとカラッと晴れたこの気候が成せる風景さ。」
『綺麗。』
今まで忌み嫌っていた白だけど、この真っ白は世界は今まで見た中でなによりも美しい。
まさに白銀の世界の絶景。
私は息をするのも忘れて、じっとその景色に見入っていた。