第6章 白銀【2】
ー寝た、か。
後ろから感じる呼吸音が一定になったのを感じて、俺はカラの方へ向かう。
首筋に手を這わせ、脈とある程度の体温を測る。
…脈は正常。熱も、、、ない、な。
次に能力を展開して、肺を診る。
熱がある時に見た時とは違い、拍鉛を取り除いた周りの組織の色も正常で、炎症は治ったようだ。
俺はカルテに書き込みながら考える。
あとは拍鉛に侵されていた組織が修復するのを待つだけだが、、、
俺はスヤスヤと眠っているカラの顔を見る。
これが痛みを伴う。
神経の巡り方にもよるが、チクチクと針で突かれているような気持ちの悪い痛みから、叫びたくなるほどの鈍痛まで、色々なパターンのそれに耐える日々が始まる。
脳裏に昔の俺の影がチラつく。
肌の拍鉛を除去した時は、チクチクと痛むその部分にイライラし、手当たり次第に物を壊して当たり散らした。
肝臓の拍鉛を除去した時は、鈍痛に悩まされ、その部分を肌の上から何度も掻きむしって傷を作った。
筋肉の拍鉛を除去した時は、むず痒くて仕方がなくて、小さなナイフを腕に突き刺した。
俺の時も、今のカラに対しても、その場凌ぎの痛み止めしか頼りがないが、せめて無駄に傷を増やさぬように気をつけてみていこう。
ババァにも相談したが、肌のものなら塗り薬なら効くかもしれないと言われたが、臓器に直接付けられるものはない、と言われ、こればっかりは耐えてもらうしかないようだ。
カラの回復力なら、そうだな、、、1週間もあれば元に戻るだろう。
それに合わせて、少しずつ肺に負担を掛けていく。リハビリだ。
前のように動けるようになるのは2週間は掛からないだろうが、、10日というところか?
俺はまた椅子のある場所へと戻り、ババァから借りた本の最後の一冊に手を伸ばした。
夜はどんどんと更けていき、気温は容赦なく下がるが、眠るつもりのない俺の頭は燃えるように熱く、目の前の本から知識をどんどんと吸収していった。