第6章 白銀【2】
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『っ、待って!』
ーカタ
小娘の高く、細い声が聞こえた。
あんまり声を張るんじゃないよ。病み上がりの癖に。
『ロー、私前に言ったじゃない。
病のことについてはもう、謝らないでって。』
『私の何を奪っても、私の命を延命するだけでそれは達成されるはず。
貴方はここまで私の病に左右されることはないわ。』
?なんの話だ?
『私は道すがら治療するだけで良い。
船を強化しないとそれができないのであれば、普通通り進んで強化すれば良い。
その途中で私が死んでも構わないわ。』
は?
『ロー、ごめんなさい。
私が、私の病が、貴方の医者としての部分を縛ってる。
貴方は海賊。誰よりも自由なはずよ。
私の病なんて背負わなくて良いから、自由に進んでほしい。
…診てもらってる身でこんなこと言って、申し訳ないけど、、本心よ。』
『…だから、謝らないで。
……背負わないで。』
…小僧の自由を奪うのがそんなに嫌かい。
自分の存在が重荷になるのがそんなに怖いかい。
「俺が、、、俺が、どこへ向かおうと、誰を診ようと、俺の自由だ。」
バタン
ガチャ
「ヒッヒッ、どうだい小娘、ハッピーかい?」
気づけば、小娘に話しかけていた。
「間に合わずに死んでも別に良い、と言っていただろう?」
『あぁ、そのこと、、、えぇ。本気よ。』
そう言った小娘の目は妙に落ち着いていた。
「そりゃなんでまた。せっかく治る当てが見つかったってのに。
…アタシを初めて見た時の反応からして、医者には何度も行ったんだろう?」
『えぇ、そうね。
でも、人の自由を奪う行為は、何よりも愚かなことだと思うから。』
そう言った小娘の目は、何かを見据えて燃えていた。
「それで、あんなこと言ったのかい?」
『…ローみたいな、信念のある海賊達はね、きっと自由を求めて海賊の道を選んだの。
誰よりも自由を愛す彼らからそれを奪うなんて、私にはできない。』
「へぇ、そうかい。」
『えぇ。』
そう言って笑った顔は、小娘のそれとは違っていた。
その顔は、強い女の顔だったが、何か、大切なものを諦めたような、冷たい光が隠れて見えたような気がした。
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