第6章 白銀【2】
ーガチャ
「ヒッヒッ、どうだい小娘、ハッピーかい?」
『…ドクトリーヌ…』
「お前、ただの小娘かと思えば、肝が座ってるじゃないか。」
『…聞いてたの?』
「ヒッヒッヒッ、盗み聞きしてた訳じゃないさ。偶々聞こえただけさね。」
『…そう。』
ドクトリーヌはハーブティのような飲み物を淹れてくれた。
一言お礼を言って口をつける。
しばらくの沈黙の後、先に口を開いたのは私の方だった。
『ローが言ってたわ。
貴方が居なかったら私の大切なものを奪っていたかもしれないって。
…ありがとう。』
「へぇ、そうかい。別にアタシは思ったことを口にしただけだ。
動いたのは全部あの小僧だよ。」
『…へぇ。』
私たちの間には再び沈黙が流れる。
次に沈黙を破ったのはドクトリーヌ。
「それにしても、さっき言っていたのは本気かい?」
『何が?』
「間に合わずに死んでも別に良い、と言っていただろう?」
『あぁ、そのこと、、、えぇ。本気よ。』
「そりゃなんでまた。せっかく治る当てが見つかったってのに。
…アタシを初めて見た時の反応からして、医者には何度も行ったんだろう?」
『えぇ、そうね。
でも、人の自由を奪う行為は、何よりも愚かなことだと思うから。』
私はおじさまから教養として教わった、この世界の1番の歪み、天竜人を思い浮かべた。
「それで、あんなこと言ったのかい?」
『…ローみたいな、信念のある海賊達はね、きっと自由を求めて海賊の道を選んだの。
誰よりも自由を愛す彼らからそれを奪うなんて、私にはできない。』
「へぇ、そうかい。」
『えぇ。』
私は笑って、ドクトリーヌに答えた。
ドクトリーヌは何故か少し驚いたような顔をしたあと、お酒を瓶のまま煽った。