第6章 白銀【2】
「なら、俺は少しアイツらに連絡してくる。」
『わかった。』
「あぁそれと、あのババァのことだが、、」
「…」
『?』
ローが急に黙っちゃった。
???
どうしたんだろう?
「…あのババァは、俺よりも知識があった。
……あのババァが居なかったら、俺はお前の、、大切なものを奪っていたかもしれない。」
『ロー。』
ローがどんな顔をしているのか、背を向けた姿からは見ることはできない。
でも、その声色から、後悔とか、悔しさとか、そんなものに苛まれているのが窺えた。
なによりも、机に積まれた本の量がそれを物語っている。
「すまなかった。
…あのババァには、色々と救われた。」
ローはそれだけ言って、歩みを進めようとした。
『っ、待って!』
私はローのロングコートの袖を掴んで止めた。
『ロー、私前に言ったじゃない。
病のことについてはもう、謝らないでって。』
ローは動かない。
ローは、優しすぎる。
『そもそも、貴方はおじさまとの契約のために私を治してる。
でも、ただそれだけよ。』
ローは動かない。。
『私の何を奪っても、私の命を延命するだけでそれは達成されるはず。
貴方はここまで私の病に左右されることはないわ。』
ローは動かない。
『航路のことだってそうよ。
私は道すがら治療するだけで良い。
船を強化しないとそれができないのであれば、普通通り進んで強化すれば良い。
その途中で私が死んでも構わないわ。』
ローの指がピクリと動いた。
…勿論、私にも夢はある。
でも、ローの自由を奪ってまで、叶えたいとは思わない。
『ロー、ごめんなさい。
私が、私の病が、貴方の医者としての部分を縛ってる。
貴方は海賊。誰よりも自由なはずよ。
私の病なんて背負わなくて良いから、自由に進んでほしい。
…診てもらってる身でこんなこと言って、申し訳ないけど、、本心よ。』
ローはゆっくりと振り返る。
私は構わずに続ける。
『…だから、謝らないで。
……背負わないで。』
私はローの目を見て、はっきりと言った。