第6章 白銀【2】
俺は祈るような思いで、迷子のように動くカラの手をとった。
剣士で、あれほど強い女の手だというのに、それは遥かに俺よりも小さくて、細い。
掌は今までの努力が窺えるほど硬くなっているが、その白くてしなやかな手は、まだ子供の女の手だった。
強くはないが、きゅっと力の入った手を、どうしても振り解く気にはなれず、少しの間、そのままに、モニターを眺めていた。
静かな部屋に、カラの荒い呼吸音と無機質な機械音が流れる。
と、その時、ババァが席を立った。
「オイ、どこへ行く。」
「ヒッヒッヒ、どこって、別にどこでもいいだろう?
その娘はもう大丈夫さ。その娘の勝ちだ。」
そう言ってババァは自室であろう、隣の部屋へ去っていった。
俺はもう一度モニターを見る。
?
まだなんの兆候も見られない。
先程と変わらないグラフの形。
あと30秒で約束の2分が終わる。
3、2、1、、
「っ!」
2分前の記録と、今の記録を見比べる。
本当に僅かだが、数値が全て上昇している。
このまま様子を見ると、良い方向に上がって行くだろう、というのが見て取れる数値だ。
俺はほっと息を吐き、キュッと、握る手に力を込めた。
心なしか、呼吸も穏やかになったように思える。
俺は肺に溜まった息を吐き、側にあった椅子に腰掛けた。