第6章 白銀【2】
『はっ、はっ、はっ、はっかっ!』
カラの息が短く、浅くなって、僅かながら、サチュレーションが下がり始めた。
このまま様子をみれるのはあと数分。
それ以上放っておくと、心臓と肺が限界を迎えてしまう。
俺は呼吸器を手に取り、装着の準備を始めた。
あと数分の猶予があるとはいえ、もう待てない。
回復が遅くなるが、この苦しむ姿をもう見てられない。
俺はチューブやテープなど、必要なものを手に取り、カラの頭の方へ移動した。
パシッ
「あと2分、待ちな。」
ババァが俺の手を掴んでそう言う。
振り返ってその顔を見ると、先程までのニヤニヤした顔とは一変し、荒い呼吸を繰り返すカラを見つめ、一筋の汗を流していた。
「チッ…2分か、、、ギリギリ、どうかってラインだな。」
「あぁ。その間、サチュレーションが上向きになるような前兆がデータに現れ無ければ、ソレをつけないとダメだね。」
「もう十分待っただろう。これ以上は待てない。」
「いや、あと2分だけだ。待ちな。」
「…」
俺とババァは無言で視線を交わす。
互いに引く気のない、強い瞳だ。
『はっ…はっ……ぁ』
カラが口を動かして、何か言っている。
うわごとか?
『ぁ、っ!、、、、し、さ、』
夢を見ているのだろうか。
もぞもぞと布団の中を動く手を見ると、何かを探しているようにも見える。
俺はふと視線をそちらに向けると、端の方で何かが光ったように見えた。