第6章 白銀【2】
しんじゃう?
しぬ
死ぬ?
『っ、はっ!』
音と文字が重なった時、背中を何かが這い上がるような、なんとも言えない悪寒が自身を襲った。
穏やかだったはずの海は、いつのまにかあの日のように荒れ果てて、私の体は海の好きなようにくるくると回る。
苦しい。
怖い。
寒い。
これは夢?それとも、現実?
現実にしては、自分がやけに冷静だ。
夢にしては、息が本当に苦しい。
嗚呼、ダメだ。
考えるのが面倒になってきた。
どちらでもいいよ。別に。
ただ、疲れた。
この荒波もうるさいな。
私は眠たい。
力を抜いて目を閉じると、さっきの荒れた海が嘘のように静かな流れになった。
そのまま私の体は深くて暗い、海の底に向かってゆっくりと沈んでゆく。
目を閉じると、視界の隅に小さな小さな光の粒が見えた気がした。