第6章 白銀【2】
カチ…カチ…カチ…カチ…
時計の音だけが部屋を包む。
あれから俺とババァは何も言わず、ただ手元の本に視線を向けていた。
『んっ………』
小さく息を漏らす声が聞こえた。
ふと時計を見上げると、11時を少しすぎた頃。
ババァの予想した時刻にもうすぐ達する。
俺は一度本を閉じ、机の上に置いてカラの元へ寄った。
モニターには異常はない。
だが、今までのバイタルを記録し続ける紙を見ると、少しずつだが心拍数が増えていっているようにも見える。
もし、自発呼吸もしにくくなるほど苦しむようであれば、すぐに呼吸器を繋げるように、準備だけはしておく。
こればかりは使わずに済むことを願うしかないが。
ババァも考えることは同じのようで、俺のやろうとすることを補助するように、俺が動きやすいように必要な器具や薬などを近くに配置している。
カチッ
俺達は終始無言で今できる限りの作業を終え、11:24を迎えた。