第6章 白銀【2】
「いいかい
優しいだけじゃ人は救えないんだ!!!
人の命を救いたきゃそれなりの知識と医術を身につけな!!!」
「腕がなきゃ誰一人救えないんだよ!!!!」
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あの日馬鹿トナカイに言った言葉を間違いだとは思わない。
実際、フレバンスを、拍鉛病患者を救えなかったのは私に腕がなかったからだ。
フレバンスが滅んだ日から、それは私の中での変わりのない事実。
だが、それと同時に、あの馬鹿2人の患者への想いも否定することはできない。
想いが無ければ、患者は救えない。
それもまた事実。
「…」
では、あの小僧はどうだろうか?
聞けば、これからは最速でウォーターセブンを目指すと言う。
小娘の治療環境を整えるために。
「俺が医者である以上、ゆくゆくは必ず必要になる設備だ。
別にアイツのためじゃない。」
…そんなことは言っていたが、本来ならエターナルポースを手に入れ、直通で目指す必要はなかったはずだ。
海賊にとって命を左右する航路を変えてまでも、医者である自分を通し、患者を見つめるその心意気。
そしてそれに意も唱えず慕う仲間たち。
…それに、、、アタシにはなかった病を治すための腕もある。
知識が足らないことを素直に認め、学ぼうとする強さがある。
ーカタ
気がつくと、無意識に本棚から数冊の本を抜いていた。
…確かに、まだ若さ故の未熟さは否めない。
それでも貪欲に知識を欲する姿勢は嫌いじゃない。
トラファルガー、流石アンタの息子だ。
あの小僧は、アンタに負けない程の名医だよ。
…素直さは少し足らないが、ね、、、
小娘に向けていた視線はただの患者に送るそれとは違う。
拍鉛なんか関係ない。
無自覚かつ、芽生え始めの想い。
ふっ、、、
目は口ほどに物を言うとは、よく言ったものだ…
アタシは数十冊の本を抱えて部屋を出た。