第5章 白銀
「…よし、あとは戻すだけだ。どうだ?
あっという間だったろう?」
『あ、』
私はいつの間にかオペに対する恐怖が全く無くなっていることに気がついた。
ローは私が必死に気を逸らそうとしているのに気付いて、話を振ってくれたんだ。
ローの優しさに胸が熱くなる。
『ロー。ありがとう。』
「…あぁ。」
ローは慣れた手つきでバラバラになった私のパーツを戻す。
全てが終わって、衝立を外す。
私は起き上がろうとベッドに手を着いた。
「待て、動くな。」
『え?』
「しばらくは、そうだな、、1日はその体制のまま。3日はベッドの上での生活だ。」
『えぇ!?』
「当たり前さね。この男の能力だから意識もあるし痛みもないが、まともにオペをしたら麻酔で動けない。
それに、、、体感はないだろうが、身体にはそれなりに負担がかかってる。大人しくしてな、小娘。」
「…そういうことだ。医者の言うことは聞くもんだ。」
『…はい。』
私は2人のいうことを素直に聞いて、かけられた毛布を肩まで被った。
「恐らく、明日からは身体のあちこちが辛い筈だ。
治療は全力で当たるが、」
『大丈夫。痛みとかのことでしょう?気にしないで。』
「…すまない。」
『…ロー。1つお願いがあるの。』
「なんだ。」
『病気の治療の件ではもう謝らないで。2度と。』
「…」
『貴方が悪いことなんてひとつもない。
治してもらえるだけで、普通ならありえないほどの奇跡だわ。
それに、自分本位のことを言うとね、謝られても私にはどうしようも無い上に、惨めになるの。
だから、お願い、』
「…あぁ。わかった。」
『ふふ、ごめんね。
それと、ありがとう。』
「あぁ。」
おじさまもよく、私に謝ってたな。
その時も同じことを言ったのを思い出す。
本当は、惨めになる、とかは思わない。
ただ、私のせいでそんなに心を痛めないでほしい。
…だって、そんな風に思ってしまう優しい人たちだから、
もし、私が死んでしまった時に、自分のせいだとか、考えて欲しく無い。
私が病で死んだのなら、それはフレバンスの医者に診せたおじさまのせいでもなく、病を治しきれなかったローのせいでもない。
きっと私はそういう定めだった。ただそれだけのこと。
だから、謝らないで。