第5章 白銀
私にはまだ、刃を振るう目的もない。
おじさまの言う覚悟も気概もない。
まだあの刀を持つ資格はない。
おじさまは置かれた刀を手に取って言う。
「今はまだ、俺が預かる。
覚悟を決めたならいつでもいい。すぐに言え。
だが、この刀はもうお前のものだ。
何年かかっても構わない、必ず取りに来い。生涯胸に秘める剣が見つかるまで、責任は俺が持つ。」
『はい。』
話は以上だ。
そう言っておじさまは踵を返し、部屋から出ていった。
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小夜とはそうやって出会った。
私が小夜を手元に置いてからも中々扱えず、自分の思うように扱うにはかなり時間が掛かったな、、
でも、歳を重ね、日に日に稽古を積む度に手に馴染むようになった小夜。
今、心から思う。
この刀以上に私の命を預けられる刀はない。
私は生涯この刀を手放す気はない。
確か、ワノ国のある地方では刀を墓標にする文化があると聞いたことがある。
私が死んだ時もそうして欲しいな。
…おじさまが私の肩身として持っていたいと言えば、止めないけど、、、やっぱり、1人で眠り続けるのは寂しいから、小夜だけでも、側に。
と、すぐ隣に立てかけてあるローの刀が目に入った。
『ねぇ、ロー。』
「なんだ。」
『ローのその刀、、、妖刀よね?』
「あぁ。鬼に慟哭の哭と書いて、鬼哭だ。」
『…随分と物騒な名前ね。』
「そうか?俺は気に入っているが。
鬼が哭く、というのはなかなかイカしてるだろう?」
『ふふ、確かに。妖刀らしい名ではあるわ。』
「そういうお前の刀の名は随分と可愛らしいがな。」
『そうかしら。』
「あぁ。だがお前らしい。良い刀だ。」
『ありがとう。ローの刀も、ローによく似合う。
ローくらいの身長がないと抜くこともできないなんて、ローのためにある刀みたいで良いわね。』
「はっ、そんな風には考えたことはなかったな。」
ローは少し優しく微笑んだ。