第5章 白銀
「カラ、話がある。そこに座れ。」
『はい。』
城へ帰って片付けを終えると、私はおじさまの部屋に呼ばれた。
おじさまが話がある、と私にいうのは決まって重要な話がある時だ。
指されたソファに腰掛け、緊張して話を待つ。
「お前も今回の旅で分かっただろうが、海は広く、偉大だが命を落とす危険がある。
相手が人であってももそうだ。人攫いや海賊はもちろん。俺と共にいるなら時に海軍や政府が敵に回るかもしれない。
常に俺が隣にいてやれるかもわからない。何があるかはわからないからな。」
私はずっとおじさまに守られていた。
そのことを身に染みて感じた旅だった。
「最低限、お前は自分の身を自分で守る術を身につけなくてはならない。
そこで、だ。」
おじさまは見たことのない刀を取り出し、私とおじさまの間にある机に置いた。
「カラ、お前の刀だ。名を小夜という。」
『小夜…』
「そうだ。
島に滞在している間に、俺の刀を打った者に頼んで作らせた。」
私は机に置かれた刀を鞘に入れられたまま持ち上げてみる。
手に掛かる重みが、コレが本物であることを物語っている。
「抜いてみるといい。」
私は言われるまま、ゆっくりと鞘から刀を抜いた。
『っ』
艶やかで綺麗な黒。
その美しい刀身に目を奪われた。
「今のお前にはまだ少し大きいが、いずれ馴染む。
…どうだ?初めての刀は。」
私が初めて見た時に感じたのは、それによる大いな感動。
でも、それ以上に、、、
『怖い。』
私はそう言って早々に刀を鞘に戻した。
コレは命を奪えるモノだ。
そう認識した瞬間、海で溺れた時の恐怖が蘇る。
「ふ、そうか。」
おじさまは嬉しそうに、楽しそうに少しだけ笑った。
そして再び真剣な顔つきで私に言う。
「いいか、カラ。刀を持つ、と言うのは一人前の剣士になる、と言うことだ。
その瞬間、自らの刃に責任を持て。
常に剣士の誇りを携え、己に恥じぬ行いをするのだ。
無意味な刃は己の大切なものを傷つける。
目的のない剣を持つことは許さない。
胸に強く、誰にも折れぬ剣を持ち、生涯貫け。
その覚悟、その先の未来を見据える気概の無いうちは腰に刀を差すな。」
『はい。』
私は手の中にある小夜を机に置いた。