第5章 白銀
「そいつは今どこに?」
「薬草の調達さ。4日は戻らないようにしてある。
あぁ、拍鉛病が伝染病だとか言うバカとは違うからそこは安心しな。
ただね、アイツはどんな病も治す万能薬になるのが目標でアタシについて回ってるんだ。
…今はまだ、アタシに治せない病があると知ったらきっとショックがデカい。時期尚早なのさ。」
「そうか。」
会ったこともないけれど、ドクトリーヌの悲しそうな、優しい顔を見て、その助手の子は心に傷を負っていることが想像できた。
「ところで、小娘、お前の名は?」
『パトラ・D・カラです。名乗るのが遅れてすみません。』
ドクトリーヌは驚いたように目を見開く。
「?どうした。」
「いや、、、何もないさ。
もう始めるかい?」
「あぁ。そうだな。お前ら外に出てろ。
シャチは後で用がある。呼ばれたら入ってこい。」
「え?俺?」
「あぁ。」
分かったらさっさと出ろと言わんばかりにローは刀の柄でベポ達の背中を押す。
ーパタン
部屋の中には私とドクトリーヌとローが残る。
賑やかなみんなが居なくなって、少し寂しく、不安が膨らむ。
静かな沈黙を破ったのはいつもと変わらぬロー。
「カラ、そこの手術台に寝ろ。…痛むだろうが、、、オペの前だ。あまり薬は使いたくない。…少し、耐えてくれ。」
『えぇ。大丈夫よ。』
私は部屋の真ん中に用意されてるベッドに横になる。
途端に杭で打たれているような重い痛みが襲う。
『っ、くっ!、、、』
「…カラ、これ握れ。掌に傷がつく。」
『、、っ、』
「…」
ローに差し出された布を掴んで痛みを逃す。
声だけは出さないように、必死に噛み殺す。
…暫くして、
『っはぁ、はぁ、はぁ、、、ごめ、、、、ロー、もう、大丈夫、、』
「あぁ。…少し休め。」
ローは刀を肩に担いだまま、ドクトリーヌの用意した薬や器具をガサガサと確認しに行った。