第5章 白銀
「あぁ。オペに関しては、任せろ。」
ローはニヤリと笑って答えた。
いつもは悪いことを考えてる時に見る顔だけど、こうして患者として見ると、とても安心する表情だ。
「…とは言っても、無麻酔のオペなんざ、恐怖でしかないだろう。
安心しろ。まずはシャチで実演してやるよ。」
『え?実演??』
オペを?
「とにかく、ババァの家に向かうぞ。
ペンギンを手伝いに行かせた。もう準備はできてるはずだ。」
『え!きゃあっ!!』
ローはそう言うなり、私の体を毛布ごと抱き上げた。
私は急に視線が上がったのに驚いて、ローの黒いコートを咄嗟に掴んでしまう。
『ロー!歩けるよ!』
「ダメだ。ただでさえ昨日寝てないんだ。なるべく体力温存しとけ。」
『それはローも一緒でしょう?』
「俺はオペしたら終わりだが、お前はそれからが勝負なんだぞ。」
『でも!重いし恥ずかしいから!!』
「は?バカ言うな。軽すぎだ。日頃からもっと食え。」
ーガチャ
「あ、キャプテン!カラ!」
甲板にいたベポが走って駆け寄ってくる。
「カラ、大丈夫?」
『えぇ。心配かけてごめんね。』
「きつかったよね。僕何も出来なくてバタバタしてただけで、、、頼りにならないクマでスミマセン。」
『あぁ!ベポ、大丈夫よ!!』
「オイ、ベポ。ババァの家はどっちだ?」
ローはベポの落ち込み様をガン無視して質問をぶつける。
可哀想なベポ。
「あぁ、こっちだよ。
…キャプテン、カラ僕が抱こうか?毛皮あったかいよ?」
「昨日風呂は入ったのか?」
「入ったよ!」
「それならまぁ良いが、カラ、どうする?」
「カラ、昨日お風呂入ったからふかふかだよ!僕!!」
ベポがキラキラした目でこちらを見て、手を広げて待っている。
そして夜のうちにこっそり触ったあのもふもふ…
『〜っ!ベポ、お願いします…』
「うん!」
ーふわっ
『あったかい!もふもふしてて気持ちいい!!』
「へへ、でしょ?」
手触りも最高で、あぁ、こんな布団が欲しい。
「…行くぞ。」
「うん!」
ベポは優しく私を抱いたまま、ドクトリーヌの家に向かった。
今からオペだけど、なんだかすごく安心できた。