第5章 白銀
俺は1度部屋に帰ってババァにノートを手渡す。
そこには以前カラから聞いたことや、身体中のアザの位置、大きさ、広がり方など拍鉛病に関する全てを書いている。
真っ当な医者なら、ホイホイとカルテなんざ渡すべきではないのだろう。
だが、あのレポートが本当にこのババァのものなら、拍鉛の知識量なら俺よりも上。いや、拍鉛が消え去った今、世界で1番の知恵を持っていることになる。
ババァは黙ってそれを眺めたあと、俺に返してきた。
「海賊のくせに、ちゃんと医者やってるようだね。よく書けてる。」
「それはどうも。」
「治療プランは?全く当てがなくて引き受けたわけでもないだろう。」
「あぁ。
だが、この船での治療はまだ無理だ。設備が足りねぇ。まずはウォーターセブンに向かって船を強化する。
…ただ、肺の拍鉛だけでも先にどこか安全な島で取っておきたい。」
「取るっつったって、、、どうやって。
拍鉛の中毒は薬の中毒とは違って尿からの排出は無理だ。
拍鉛は水に溶けない。物理的に取れるなら話は別だがね。」
「なら、物理的に取ればいい。…オペだ。」
「無茶言うんじゃないよ。んなことしたら身体中穴だらけだ。話にならないね。」
「俺なら出来る。」
「一体何百回オペするつもりだい?身体がもたないよ。」
「Roomーメス」
「!?」
俺はババァの胸から心臓を抜き取る。
それを放って寄越すと、ババァは納得のいったようにニヤリと笑った。
「ヒッヒッヒ、たしかに、この実の能力があれば可能だね。」
「ふっ、そうだろう?」
「お前たち、ログが溜まるまであと何日だい?」
「あと4日だな。」
「4日…ギリギリ、間に合うかどうかってとこだね。」
「?なんの話だ。」
「…よし、ウチの設備を貸してやる。その肺の拍鉛だけでも取っていきな。」
「!」
正直、ありがたい話ではある。
ウォーターセブンに着くのがあとどれくらいかかるのか全くわからない。
だが、このババァ、なにが目的だ?
何故こんなにも俺達に関わる?
「理由を作るなら、、、究極の悪魔の実と呼ばれる能力、それと、アタシには治せない病、これらに医者としての好奇心が湧いたから、、ってとこか。」
医者としての好奇心、ねぇ。
「…乗った。」
俺はババァに向けてニヤリと笑みを返した。