第5章 白銀
ペンギンが血相を変えて甲板に上がってきた。
俺は能力でペンギンと俺の場所を入れ替え、船室に入る。
『ハァ、ハァ、ハァ、、、カヒュっ!、っ!ゼェ、、』
過呼吸か。
「カラ、ゆっくり息を吐け。」
「どうしよう!キャプテン!!部屋に入ったら刀抱きしめて急に、、」
「あぁ。わかってる。ベポ、慌てるな、カラが余計混乱する。」
ペーパーバッグ法は錯乱してる相手にやるには少々窒息のリスクがあって危ねぇ。
安心させて自然な呼吸に戻すのが一番だ。
『ヒュッ!っ、カハッ!!、、ごめ、なさ、、、はっ!、ばけ、も、の、、じゃ、ハッ、、、カヒュッ!、、ぉじ、さま!!』
鷹の目を呼び、縋るように刀を抱くカラ。
鷹の目がよっぽど心の拠り所なのだろう。
危ないと思って刀を取ろうとしても決して手放そうとしない。
「カラ、落ち着け。誰もお前を化物呼ばわりする奴はいない。大丈夫だ。」
「カラ〜!大丈夫だよ!僕もいるよ!!」
俺は背中を出来るだけ優しく叩き、息を吐くように促し、ベポは毛皮でもふもふとした手をカラの手の上に重ねている。
「キャプテン、これ…」
「あぁ、助かる。」
シャチが濡らしたタオルを持ってきた。
俺はそれを受け取り、カラの首筋に当ててやる。
『ヒュッ!、、ハッ、ハッ、はぁ………はぁ………』
「そうだ。ゆっくり吐け。」
『はぁ……………はぁ……………ろぉ?』
「なんだ。」
やっとカラの目がこちらを向いた。
『ロー、だ、、、』
そう言ってふにゃりと笑ったあと、ゆっくりと目を閉じた。
「カラ?キャプテン、、、」
「気を失っているだけだ。心配ない。」
「そっか、、よかったぁ。」
カラをベポに預け、部屋に寝かせるように言った時、ペンギンとババァが入ってきた。
「見ただろう。コイツはもう医者を信用できねぇ。診察なんざ持っての他だ。」
「ヒッヒッ、そうかい。それは悪いことしたねぇ。
…心の傷はアタシにも治せない。
…それなら詫びに知識だけは貸してやるよ。カルテくらいあるだろう?見せな。」