第5章 白銀
『ロー…』
ドクトリーヌの後ろにローの姿が見えた。
柄にもなく安心して、ほっと息が漏れた。
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そろそろ雪が鬱陶しく思ってきた頃、やっと船が見えた。
いつもはどうって事ないが、やはり雪道は歩きにくく、荷物がより重く感じる。
すると、船の上でギラリと黒い何かが光るのが見えた。
(なんだ?)
もう少し近づいてよく見ると、それはカラが抜いた刀だった。
刀を向けた先にはやたら薄着のババァがいる。
(誰だ?)
明らかに俺やカラよりは弱い。
にもかかわらず、一分の隙もなくカラが刀を向けているのは何故だ?
「オイ、テメェ、そこで何してる。」
『ロー…』
俺はババァの背後から声をかける。
カラは俺の顔を見るなり肩の力が抜けたように、刀の鋒を下ろした。
「ヒッヒッヒッ、船長のお出ましかい?
何、まだ何もしちゃいない。ちょいとそこの小娘を診ようとしただけさね。」
余裕を感じさせるように、ババァは俺にそう言う。
なるほど、このババァ、例の魔女とか呼ばれる医者か。
それでカラがやたら警戒してたのか。
「あいつは俺の患者だ。帰れ。」
「若造が…ん?」
ババァは俺の手元…城から盗んできた書物に興味を示した。
「ヒッヒッ、城から盗んできたのかい?懐かしいものを見た。
なるほど、、、あの小娘、拍鉛病か。」
『っ!』
ーガシャン!
カラがびくりと肩を震わせ、刀を落とした。
遠目に見ても、ガタガタと震えて、パニックになりかけているのが分かる。
「ベポ。」
「うん!カラ、大丈夫だから、、、中にいよう?」
『あ、、、』
パタン
カラは何か言いたげな顔をしていたが、半ば強引にベポに抱えられて船室へ帰った。