第5章 白銀
医学書達を抱えてロープウェーに向かうと、しっかりと仕事を済ませた2人が待ち構えていた。
王宮と言っても警備は割と雑なものだった。
きっと守備隊とやらの隊長の頭が悪いんだろう。
俺たちはさっさとロープウェーを一つ拝借し、漕ぎ出した。
「流石医療大国と言われるだけありますね。
例のキャプテンの言っていたレアな薬もありましたよ。」
「ほう。それは良い収穫があった。書庫の本も質が高かった。しばらくは暇をしなさそうだ。」
やはり街にある書店とは訳が違う。
論文の類の質は格別だった。
「ふぁ、、、それにしても眠いですね。
俺船に入ったら速攻で寝れそう。」
「風呂くらい入って寝ろ。」
「え〜面倒くさいです。」
「ベポにノミが沸くだろう。」
ベポは元来風呂が嫌いだ。
人ならまぁ、何日か風呂に入らなくても周りへの実害はないが獣は違う。
シャチとペンギンとベポは同室だ。
せめて人である2人は清潔にしてノミのリスクは減らしてもらいたいものだ。
「うわっ、それだけは勘弁。シャチ、風呂だけは入れ。」
「はいはい。」
ペンギンも以前の惨劇を思い出したらしい。
俺もあんな思いは二度としたくない。
「あぁ、でも、最近船の中綺麗だよな。」
「カラが気がついた時に掃除してくれてるしな。」
「そうなのか!?飯だけじゃないのか…」
「…飯はあいつが進んでやる、と言ってきたから頼んでいるが、、、掃除は別だ。
俺はカラを患者として乗せたんだ。クルーでも無けりゃ使用人でもない。
その辺り弁えながら過ごせ。」
「「はーい」」
ペンギンは大丈夫だろうが、、、問題はシャチだ。
この男は劇的に頭が弱いからな。会話も偶にままならない。
ペンギンもお世辞には頭がいいとは言えないが、勉学的な意味以外では頼りになる。
ベポは驚く程に打たれ弱いが航海士としての役割は確実にこなす。
絵が下手なのは珠に傷だがな。
「あ、キャプテンもうすぐ着きますね。」
「あぁ。」
俺は2人の待つ船まで歩みを進めた。
ふと空を見ると、星が眩く煌く。
船に戻る頃には朝日が見られるだろうか。
そんなことを考えながら雪の中を歩いた。