第5章 白銀
『それにしても…雪ってこんなに積もるものなのね。』
「あぁ。俺もここまで積もってるのは初めて見る。
…それより、、、あの山の上によ、城が見えるんだが、、、もしかして王宮ってあれのことか?
どうやってあんなとこまて登るんだよ。」
ペンギンから双眼鏡を受け取って覗く。
確かにそこには城が見える。あんな不便なところになんで建てたんだろ。
『あ、でも見て。ロープみたいなのが何本か繋がってるからロープウェーのようなものでもあるんじゃない?』
「あ、本当だ。にしても、不便だろうな〜。」
『そうね。』
「寒いし部屋に入ってようぜ。」
『えぇ』
私は船室に入り、コーヒーを淹れてペンギンに渡す。
「サンキュ。
…あのさ、ずっと聞いてみたかったんだけど、、、カラはあの日、怖くなかったの?
その…俺たち海賊じゃん?」
『え?』
ペンギンは急に私にそう語りかけた。
「いや、急に鷹の目から放り出された時、目が覚めたら海賊船って、、、なぁ。」
あの日、怖くなかったか、かぁ。
『驚きはしたけど怖くはなかった。
…こう言っちゃ申し訳ないけど、、、黒刀を持たないおじさまでもローに負けることは無いのは分かっていたから。』
「いや、そうじゃなくて、、、カラ自身が、だよ。
殺されるかも、とか、考えなかったの?」
あぁ、そっちか。
『……あの時の私は病で死ぬことを受け入れてた。
私自身がそれを望んでた。
だから、自分が死ぬのは怖くなかった。』
「望んでたって、、、どうして?」
『おじさまはさ、あの時みんなと会わなくても、近い将来私を海に出すつもりだった。
私はおじさまと離れるのは嫌だったけど、私の病の為にそう言っているおじさまに向けて嫌だとは言えなかった。
だから、おじさまと共にいる間に病が殺してくれるのを待っていたの。
…今落ち着いて考えたら、多分あの時、私はおじさまがいないならいつ死んでも良かったって思ってたんだと思う。』
あの頃は、おじさまとの生活が私の全てだった。
おじさまのいない日々なんて生きている価値が無かった。
「っ、今は、そんなこと思ってないよな!
いつ死んでも良い、とか、、考えてないよな!!」
ペンギンは今までに見たことがないほど焦ったように問い詰める。
今の私は、、どうだろう。