第4章 白い道【2】
『はぁ。』
やっちゃった。
雪のことなんて知りもしない癖に勝手にはしゃいで滑って転んで迷惑かけて、、、
本当、何やってるんだろう。
子供みたい。
私はリビングでココアを飲みながら凹んでいた。
ガチャ
『あ、』
ローだ。
さっき叱られた手前かなり気まずい。
私は飲みかけのココアを全て流し込むと、何気なく自室に帰ろうと本を抱えてローの隣を通ろうとした。
「オイ。少し付き合え。」
『え?』
「いいから。速く。」
『…はい。』
ローはスタスタといつもより早足で部屋に向かい、何やらガラスのお皿?に入った白いものをレンズの付いたよくわからない台の上に置いてそれを覗いた。
「よし。カラ、ここから覗いてみろ。」
『…うん。』
ローは座っていた椅子から立ち上がり、私に座るよう促す。
私はそれに従い、レンズから中を覗いた。
『っ!何これ、綺麗…』
そこには視界いっぱいの白い花?のようなものがたくさんあった。
ひとつひとつが違う形をしていて、すごく繊細だ。
『…ん?』
でもなんだろう。じわじわと消えていってる。
とても綺麗なのにすぐに消えちゃう。これは何?
「それは、雪だ。」
私の疑問に答えるかのように、ドアに背を預けるように立っていたローはそう言った。
『これが、雪?』
「あぁ。今お前が覗いてるのは顕微鏡と言うもので、ものを拡大して見ることができる。レンズの下にシャーレに入った雪があるだろう?」
シャーレ、というのはこのガラスのお皿のことか。
この白い塊は雪だったのか。
「花のように見えているのを世間的には雪の結晶と言う。
温度や湿度なんかで模様が変わるらしい。まぁ、その辺りはベポの方が詳しいだろう。」
『本当に綺麗。消えちゃうのがすごく残念ね。』
私はまた夢中になって、シャーレの中の雪が全て溶けきるまでずっと顕微鏡から離れなかった。