第4章 白い道【2】
「オイ、急になんの真似だ。」
ローの不機嫌そうな声と、不可解なものを見るような視線が突き刺さる。
『…私は、』
私はその姿勢のまま、話し始めた。
『私は、以前。ローが「雪は存在する。」と言ったのを真っ向から否定した。
それは【ただ私がその存在を知らなかった。だから仕方がない。】と、それだけで済む話じゃなかった。』
そう、知らなかったことが問題ではないのだ。
それにベポ達は許してくれても、彼らの命を預かる船長のローは別だ。
『私は、自分の目で見たことが全てだと思っていた。
そしてそれをローたちに強要した。
それが私の過ち。
私は傲慢だった。
今回は雪があるかないか、という話だったけれど、もしこれが【船を一瞬で大破させるサイクロンはない】と私が言い切っていたら、と思うとゾッとする。
実際、そんなサイクロンは存在する。
だから、一歩間違えれば命に関わることだった。
謝って済むことではないかもしれないけれど、本当にごめんなさい。』
私はそう言ってローの言葉を待った。
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なるほど。
…前に島で買い物をした時の話か。
俺は正直、大した問題でもないと考えていた。
知らないものは仕方がない。
殆どが独学で培ってきた知識だ。見たことがないものが存在する、と言われても信じられない事は誰にだってある。
だが、確かに、コイツの言う事は正しい。
俺もグランドラインの気候やログポースのことは知らなかった。
その上、磁場の話なんざ始めは半信半疑だった。
しかし、その時にカラの言うことを否定した覚えはない。
それは単純に俺に知識がなかったからだ。
カラの言うことを信じる知識も否定する知識も俺達には無かった。
だから否定も肯定もできない。
…しかし、俺達と同じ状況でカラはそれを否定した。
それを謝っているのか。
俺は申し訳なさそうに頭を下げ続けるカラを見つめた。
「確かに、それはお前の過失だ。」
俺はぽつりぽつりと話す。
「俺はこの船の船長だ。クルーの命を守る義務があり、それが危険に晒されることは見過ごすことはできない。」