第4章 白い道【2】
それから何事も無かったかのように、3人は次の島についてガヤガヤと話し始めた。
私もさっさと食器を片して、ローの部屋へ向かう。
コンコンコン
『ロー、カラです。』
「入れ。」
その声を聞いてドアを開ける。
消毒液の匂いと微かに香るラベンダー。
香り袋、持っていてくれてるんだ。
『お邪魔します。』
よくよく考えると、ローの部屋に入るのは診察してくれた日以来だ。
その時はちらりとしか見えなかったけど、室内にあるのは見たこともないような器具や試験管、後は大量の本達。
一見乱雑に置かれた物もよく見ると埃ひとつ被ってなくて、綺麗に整頓されていることがわかる。
「なんか気になるモンでもあるのか?」
『いえ、、、ごめんなさい、ジロジロと。』
「いや、別に構わないが、ここにあるのは殆どが医学書だ。
中にはお前にも読めるようなものもあるが、、、医療にも色々と分野がある。
何か興味のある分野はあるか?」
『…そうね、、、やっぱり、勉強して活用できるものが望ましいから、、応急処置とかの方法が詳しく知りたい。
そんな本ある?』
「あぁ。それなら…」
ローはそう言いながらいくつかの本を本棚から抜き取っていく。
「この辺りがいいだろう。読み終わったらまた言え。
…他なんかあるか?」
『ありがとう。他は、、、栄養学とか?
ほら、私この船でご飯作るし。』
「栄養学…その類は持ってないな。次のドラムで良いのがあれば買おう。」
『いえ、それなら良いわ。自分で他の島で買うから。』
「いや、俺も興味がある。確かにお前が来るまでは大して食に気を使っていなかったからな。
それにドラムなら質の良い本も期待できるだろう。」
『じゃあお金、預けておくわ。』
「いらねぇ。」
『…ロー。』
「お前から一切金を受け取る気はない。
どうしても気になるなら焼き魚とおにぎりの頻度を増やせ。」
『…』
じっとローの瞳を見つめてはみるが、それに宿るのは帰るつもりは毛頭ない、という風な強さ。
『…わかったわ。次魚を使うときは焼き魚にする。』
「それでいい。」
ローは満足そうに笑った。
…それよりも、私は、、、
『ロー、ごめんなさい。』
急に頭を下げて謝る私をみて、ローは微かに目を見開いていた。