【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第5章 君のため
ヒロは僕をかばってああ言ってくれたが、
松田の言うとおりだった。
僕たちがすぐに彼女のもとへ行けば、
”今日”は思い直してくれるかもしれない。
人気のないところを死に場所に選ぶ当たり、
他人に見られるのは本意ではないだろう。
僕が考えていたことは
その場しのぎにすぎなかった。
「よし!じゃぁ作戦会議だ。
俺と陣平ちゃんは…」
「そうだな、ゼロと諸伏は…」
*
*
*
「ゼロ、やれるか?」
「あぁ、やってみせるさ」
僕とヒロは彼女のいる屋上へ向かっていた。
階段を上る足取りは、重い。
松田と萩原が彼女に気づかれないように
グラウンドから近づいていく。
屋上に繋がるドアは錆びついていて、
音を出さずに開けるのは苦労した。
「ヒロ、バレるなよ」
「分かってるって」
僕は彼女のところまで一直線に向かう。
「おい、君。死ぬのか?」