【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第12章 君は誰の手に落ちる
「……」
静かになった部屋の中を見渡すと、
裏口からキッチンを挟んで一直線上に玄関があり
6畳ほどのちいさなリビングには絨毯が敷かれており、
その上にはローテーブルが一つ置いてあるだけだ。
先ほど風見が屈んでいたところには5センチ角の黒い箱がある。
(爆弾か…それにしては小さすぎるが…。
この男が持っていたのはこれのリモコンだな)
鼻に違和感を覚えて床に顔を近づけてみると
絨毯からガソリンの匂いがした。
(なるほど…爆薬は気化させたガソリンに引火すれば良いだけの量ということか)
「ん…?」
キッチンについたカウンターの前に大きな黒いごみ袋を見つけた。
縛られた口をほどいて中を見てみると、沖矢は目を見開いた。
(女性の死体…これをそよ香の身代わりにするつもりか…)
『シュウ!バーボンの車が山の麓まで来てる!急いで!』
「了解……」
イヤホンからジョディの声が聞こえると
沖矢は風見を担いで小屋を後にした。