【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第4章 序の口
「やだっ!やめ…やめて!!」
そよ香はブランケットを頭までかぶり、
ソファの端でガタガタと震えだす。
こうなったら、仕方ない。
少々荒っぽいが…
「きゃぁっ!?やだ…っ!!」
丸まっていたそよ香を無理やり抱き上げ
俺の膝の上に乗せる。
「そよ香、俺を見るんだ」
左腕でそよ香を抱きしめ、
右手で涙をぬぐってやると
そよ香が上を向いて俺と目が合った。
瞬きをするたびに
黒目がちな瞳からは涙がこぼれる。
「そよ香…僕は沖矢、昴です」
「…す…昴…さ、ん?」
「すみません、貴女を怖がらせるようなことはしないと
お約束したのに…」
両腕でぎゅっとそよ香を抱きしめると
俺の胸に顔をうずめて泣き始めた。
思い出したんだろう、あの日のことを。
俺がもっと早くあの場所に行っていたら。
俺がもう少し早く奴らの狙いに気が付いていたら。
…無駄なことを考えるのはやめよう。
今俺にできるのは、
このか弱く小さな姫君を守り抜くことだ。