【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第4章 序の口
そう言うと、コナンも考え事を始めてしまった。
そよ香がケーキの最後の一口を頬張ると、
沖矢はそれを見計らったかのように
レモンティーをそよ香の前に置く。
「ありがとうございます…」
沖矢とコナンの顔を交互に見るが、
2人とも自分の世界に入り込んでいて
そよ香の姿は視界に映っていないようだった。
一杯のレモンティーを飲み終えるころ、
やっと沖矢が口を開いた。
「そうだ、コナン君。
今日一緒に夕ご飯を食べていきませんか?」
「…!良いの?じゃぁ僕、蘭姉ちゃんに電話してくるね」
コナンはスマホを手に取り
リビングを出ていった。
「そよ香さんも構いませんか?」
「はい、大丈夫です。あの…沖矢さん」
「何でしょう?」
「本当にいろいろとありがとうございました。
どうお礼をしたらいいか…
沖矢さんのおかげでだいぶ体調も良くなりましたし、
もう自分の家に帰ります」
そよ香は深く頭を下げ、一礼すると
沖矢をまっすぐ見つめた。
「…そうですか。では、明日にしましょう。
ご自宅まで送ります」
今朝のように何か言ってくるかと思ったが
あっさりそよ香の申し出を受け入れる沖矢に
拍子抜けした。