【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第4章 序の口
「おや、そうなんですか?
ショーケースに並んでいましたよ。
そよ香さんが好きそうだなと思いまして」
「ありがとうございます!
これずっと食べたかったんです!」
そよ香は向日葵のような無邪気な笑顔を沖矢に向けると
早速チョコレートケーキをつついた。
(…そんな顔もできるのか)
そよ香を見つめる沖矢の顔はどこか満足気だ。
「そういえばそよ香さん、大変だったね」
コナンが本題の口火を切る。
「えっ…あ、うん…」
(沖矢さん、私のことコナン君に何て説明したんだろう…)
「具合悪くて道端でうずくまってたって
昴さんから聞いたよ」
ショートケーキのイチゴを頬張る姿は
年相応に見える。
コナンにばれないよう沖矢を一瞥すると
小さく頷いた。
話を合わせろということか。
「そ、そうなの!急に気持ち悪くなっちゃって
沖矢さんが助けてくれたんだよ」
「ふーん…そうなんだ。
で、この家のことなんだけど…」
コナンはそよ香に工藤邸のこと、家主のこと
沖矢がこの家に来た経緯を説明した。