【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第4章 序の口
「僕が着替えさせましたよ。
前に着ていたものは汚れてしまっていたので
洗って洗面所にある引き出しにしまってあります。
そうだ、体調が良ければシャワー浴びますか?」
当たり前でしょう、とでも言いたげに話す沖矢に
ワナワナとそよ香のこぶしが震えてくる。
窮地を救ってくれた恩人だし、
沖矢の行動は何も間違っていないが
ぶつけようのない恥ずかしさに
そよ香は顔が熱くなるのが分かった。
「み…見ました?」
かろうじて出てきた言葉を言ってみる。
沖矢は顎に手を当てて考えるような仕草をした。
「あぁ、見ていませんよ。
そよ香さんが可愛らしいレースの下…おっと」
「わぁぁ!見てた!!見たんですね!!?」
そよ香はブランケットを丸めて沖矢に投げる。
沖矢は何事もなくそれをかわす。
「…大丈夫ですよ。
僕は貴女が怖がるようなことは何もしません」
「何も…?」
確かめるように聞くが、
沖矢はそれ以上何も話さなかった。