【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第4章 序の口
安室との電話を終え、
そよ香はリビングに戻った。
「すみません、話の途中で」
「いえ、構いませんよ。
そよ香さんは2つもお仕事されてるんですね」
「まぁ…いろいろ大変なんで」
そういえば沖矢は何をしてる人なんだろう。
平日の昼間なのに家にいて…
あれこれ妄想を広げながら
そよ香は沖矢が淹れてくれたミルクティーに口をつける。
甘めの濃い味に目が覚めてきたような気がした。
「ここは沖矢さんのご実家ですか?ご家族は…」
「ここは僕の家ではありませんし、
家族もいません。僕一人で住んでいます」
「……はい?」
そよ香の顔には
この人何言ってるの?と大きく書いてあるようだ。
「この件に関しての説明は、
僕よりも適任者がいますので後ほど連れてきます」
淡々と表情一つ変えずに答える沖矢に、
そよ香は自分が間違っているかのような
錯覚に陥った。
「…今、一人で住んでいると仰いましたよね」
「えぇ、それが何か?」
そよ香はあることを思い出す。
今着ているナイトウェアは誰が着せてくれたのかという疑問を。
「も…もしかして、この服…」