【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第4章 序の口
「あ、あの、私沖矢さんに聞きたいことが…」
「えぇ、どうぞ。なんでも聞いてください」
その微笑みの下には何が隠されているのか
今のそよ香には知る由もない。
「まずは、土曜日のことですが…」
沖矢の話によると、
その日は車でドライブをしていて、
たまたまあの空き地の横を通り過ぎようとしたところ
不審な動きをしている少年たちがいたので
声を掛けたらそよ香が襲われていた
とのことだった。
「熱もあって、意識が混濁していたようなので
そのまま救急病院に連れていって、薬をもらいました。
覚えていますか?」
「…いえ、全く」
その後、助けたはいいがそよ香の家を知らないので
沖矢の住むこの家に連れ帰ったという。
「ご家族に連絡をと思いましたが、
さすがにプライベートのスマホを見るのは
気が引けたので…」
息をするように嘘をつくのも
沖矢にとっては何でもないことだ。
「一人暮らしなのでそれは問題ありません。
……あっ!!」
「どうされました?」
沖矢がミルクティーを作ってそよ香の前に置く。