【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第4章 序の口
「そよ香さん、立てますか?」
彼女の前に手を差し出すと、
自然に手を重ね立ち上がる。
抱き上げようとそよ香の肩に腕を回すと
「結構です」と一蹴されてしまった。
反抗する元気はあるのだと
沖矢は少し安心した。
「ココアかホットミルクでも淹れましょうか」
リビングのソファでテレビをただ眺めているだけの
そよ香に声をかける。
「…また眠くなっちゃうかも」
「では、紅茶はいかがでしょう?
最近気に入ったものがありまして」
「紅茶、好きです」
そよ香の表情がパッと明るくなる。
目が合ったので、しばらく見つめていると
頬を少し赤くしてうつむいたのは
そよ香の方だった。
「可愛らしいですね」
「な…!?」
そよ香が顔を上げた時には
もう沖矢の姿はなかった。
リモコンでチャンネルを回してみるが
昼時は主婦向けの情報番組しかやっておらず
どこも同じような内容で、つまらない。