【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第4章 序の口
__ピコン、
沖矢のスマホに通知が入る。
そよ香の部屋に取り付けた
ネットワークカメラの映像が映し出された。
どうやら眠り姫がお目覚めらしい。
ベッドに座ってキョロキョロと
あたりを見回している。
(ベビーシッターか、俺は…)
良いところで仕事を中断され、
眉間にしわが寄ったが
いつもの穏やかな笑顔を作り
そよ香の部屋へ向かう。
__コンコン、
「そよ香さん、そろそろお昼ですよ…
おや、起きていたんですね」
そよ香は浮かない顔でベッドに腰かけていた。
「…寝すぎて逆にだるいです」
風邪薬に眠剤を混ぜすぎたか、と
一瞬反省した沖矢だったが
そよ香がうつ向いているすきに
ビジネスバッグへ2台のスマホを戻した。
「ではリビングでテレビでも見ますか?
このままだと夜眠れなくなってしまいますし」
こくっとうなずいてぼーっと窓の外を眺めるそよ香。
騒がしい朝の様子とは打って変わって
どこか儚げに見える。
ワンピース型のナイトウェアからスラリと伸びた足は
白いヴェールを纏っているかのように美しかった。