【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第4章 序の口
発信元を特定してみるが
これといった情報はない。
契約者はフィリピン国籍の20代男性。
東京都足立区に住んでいることになっているが
住民票を見る限り
5年前には日本を出国している。
恐らく名義だけ貸して使っているのは
別のやつ…ということだ。
発信場所はそよ香のマンションからほど近い公園。
そこで通信も途絶えているし
近くの川か海へ捨てたのだろう。
(バーボンが直接ターゲットに接触するのは
考えにくいか…
彼の得意技は内偵や情報収集だ。)
冷めきったコーヒーを口につける。
(となると、そよ香に電話をしたのは
ジン…何を話したのか…
まぁ、そこは彼に任せるとしよう)
もう一度そよ香の出自を調べようと
沖矢はノートパソコンから
国の戸籍管理システムへアクセスした。
もちろん、正規の方法ではない。
「…ん?就籍させている…?」
目に見える部分の戸籍では
そよ香は静岡県東部で生まれたことになっているが、
日本のどこかで無戸籍者として生まれ
今の両親の戸籍に就籍した履歴が残っていた。
「…誰だこんなことができるのは」