【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第4章 序の口
腕の中でスヤスヤと眠る姫君の顔は
どこかで見たことのあるような
そんな不思議な感覚がしていた。
そよ香をベッドに寝かせ
布団をかけてやる。
「…さて、と」
そよ香のビジネスバッグから
当たり前のようにスマホを2台抜き取り、
リビングへマグカップを取りに行くと
沖矢は書斎にこもった。
熱めに淹れたコーヒーからは湯気が消え、
少々ぬるい。
「…非通知の相手と話をしているな」
そよ香が持っていた2台のスマホを
解析していると
プライベートで使っていると思われる方に
非通知から着信が入っていた。
日時は先週金曜日の18時20分、
通話時間は約1分。
社用の方であれば取引先からの可能性も考えられるが、
若い女性が自分のスマホに
非通知から電話がかかってきて
1分間も喋るのはどうも不自然だ。
間違い電話であればせいぜい10~15秒程度で切るはず。
何らかの会話があったに違いない。
「ジンか…バーボンか?」