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【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜

第4章 序の口





バターの香りと、ほのかに感じる小麦の甘さ。

サクサク、ふわっとちょうどよい焼き加減は

悔しいが、自分で焼いたものより美味しかった。



「…ふふっ」



目の前にいる沖矢が笑い出す。


「何か?」

「いやぁ、貴女は表情が豊かで

見ていて飽きないなと思いまして…」


(…なんか、やな感じ)



優しいかと思ったら意地悪だったり

からかってきたり

そよ香は沖矢という人物がよく分からなかった。



「食べ終わったら薬を忘れずに。

食器はそのままで構いません」


一足先に食事を終えた沖矢は

自分の食器をさげにキッチンへと消える。


水の入ったグラスの横に

錠剤と粉薬が置いてあった。



(今日こそちゃんと聞くんだ)



そよ香は気合を入れて薬を飲みこんだ。













「そよ香さん、薬飲みましたか?」


沖矢がマグカップを片手にリビングへ戻る。


「おや」


ブランケットにくるまって

寝息を立てるそよ香の姿がそこにあった。



(ある程度静かにしていてもらわないと

こっちの仕事ができんからな…)


沖矢はそよ香を抱き上げ

ベットのあるゲストルームまで運ぶ。


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