【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第3章 人でなし
不在票を抜き取り、投函された時刻を確認すると
昨日の20時40分。
ポアロのバイトを終えて帰ってきても
十分に受け取れる時間だ。
備考欄には「ご依頼主より手渡し希望のため」と
走り書きが残っている。
(昨夜から帰っていないのか?)
降谷はエントランスをぐるりと見回す。
ここだけでも防犯カメラが3つ、
各部屋につながるフロアには入居者専用のカードキーで
自動ドアを開けないと入れない。
一度外へ出て非常階段の入り口を探した。
案の定、鍵がかけられていて
ご丁寧に静脈認証のタッチパネルまである。
(さすが、一人暮らしの女性に人気のあるマンションだ)
よじ登ってそよ香の部屋まで行くのは
造作ないが、まだ外は明るく人目につきやすい。
おそらく、エントランスだけではなく
各フロアにも無数の防犯カメラがあるはずだ。
それを全て避けながらというのは
少々煩わしい。
(…いったん出直すか)
車に戻ろうとした時、
エントランスへ入っていく人影を見つけた。