【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第3章 人でなし
「…分かりました。何かあればおっしゃってください。
ところで、マデイラはなぜ奴らに追われているのですか?」
「それはまだ分からないが…
ここは存分に “ バーボン ”を利用させてもらう。
では、また連絡する」
車のエンジン音が地下駐車場に響く。
クラッチを踏んでギアを変え、
ゆっくりとアクセルを沈めた。
(…そよ香は僕が守る)
静かに燃えるブルー・アイは
公安、降谷零の瞳だった。
*
*
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来客用スペースに車を停め、
マンションを見上げる。
先日、そよ香を送り届けたマンションだ。
無情にもヴェルモットから渡されたメモにある
住所とも一致する。
白を基調とした明るく、清潔感のあるエントランスには
左側に各部屋のポスト、右側には宅配ボックスが並んでいた。
「503…」
そよ香の部屋のポストを覗くと
ダイレクトメール、宅配便の不在票、今日の朝刊がある。