【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第1章 点と点
「今日毛利先生は特に何も言っていませんでしたけど…
中からは何か聞こえてきましたか?
誰かと喋っていたとか…」
「話し声というか…
スポーツ観戦みたいな、ワーッって声が微かに。
テレビだと思いますけど」
安室と言葉をかわすついでに
ホットミルクティーを注文する。
「…なるほど。毛利先生はお忙しいようだ。
でも、16:30までにはケリがつくと思いますよ」
「えっ?どうして…」
「外、寒かったですよね。
続きは温かい紅茶を飲みながらにしましょう」
安室は透き通った淡い水色の瞳をそよ香に向けると
厨房へ消えて行った。
(安室さん、あれで分かっちゃったの?)
毛利探偵事務所の留守電にメッセージを残しておいたから
もしかしたら折り返し電話が来るかも…と思い、
そよ香はポケットからテーブルにスマホを置いた。
「…え゛ッッ!?もう電池10%!?」
おかしい。さっきエレベーターの中で電話をかけた時、
確かに電池残量は50%程度だった。
社用スマホは電源が切れないよう細心の注意を払っているから
電池残量はこまめに確認する癖がついていた。
あれからまだ30分くらいしか経ってないのに…