【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第1章 点と点
「もー、先生いるなら電話出てよ〜」
そよ香は独り言を呟きながら
ビルの2階に上がった。
カツカツと、わざとヒールの音を立ててみる。
ピンポーン、
インターホンを押すが、返事はない。
ピンポーン、
「(コンコン)毛利先生?春野です!」
「(コンコン)先生?いらっしゃいませんか?」
耳を澄ませてみると、
ドアの向こうで微かにテレビの音が聞こえる。
しばらくその場で待ってはみたが、
何の反応も得られなかった。
「どうしたんだろう?
蘭ちゃんとコナン君が帰ってくるまで
ポアロで待ってるか…」
ビルの1階にはレトロな雰囲気が可愛い
ポアロという喫茶店があった。
__カラン、
ドアベルが鳴る。
厨房から男が一人出てきた。
「いらっしゃいま…あれ?
そよ香さんじゃないですか。
今日はバイトの日ではありませんよ?」
「今日は毛利先生に用があって。
事務所に明かりはついているのに、電話も出ないし
インターホンを押しても全然!
ドアの鍵もかかってて…
安室さん何か知りません?
先生のお弟子さんなんですよね?」
そよ香は店内から外が見えるように
窓際の席にかけた。
安室と呼ばれた褐色肌の男は、
水の入ったグラスと温かいおしぼりを
そよ香の前に置くと口を開く。