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【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜

第2章 嘘つき




「えっ…?」



急に声をかけられて振り向くと、

見知った顔があった。




「あれ?田中先輩じゃないですか」

「なんだ、春野か。

コレ、落としたぞ」

「今日は飯塚先輩と飲み会じゃ…?」



1歩、2歩と田中に近づいていくと

花柄のハンカチが握られている。



「ん?コレ、私のじゃな…」



言いかけたその時、

誰かがそよ香の腕を乱暴に掴み、

真っ暗な空き地に引き摺り込んだ。




「きゃっ!?何…!?」



目の前の状況に頭が追いつかないでいると

2人の人影が見えた。



見えたと同時に地面に突き飛ばされ、

左肩から倒れ込む。

湿った土の感触が頬に当たった。




「痛っ…」




早くここから逃げなければ

本能がそう言っている。


立ち上がろうと足に力を入れるが、

ジャリジャリと靴が地面を擦る音は聞こえても

体はいうことを聞かなかった。



「おい、ジタバタすんなよ」



若い少年の声がする。

その少年はそよ香の腹の上に馬乗りになり、

体重をかけた。



「やめ…っ」


「ふーん、顔は可愛いじゃん」



もう一人、別の少年が近づいてきて

そよ香の腕を頭の上で縛り上げる。



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