【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第2章 嘘つき
「…いえ、大丈夫です!
ラストまでがんばります!」
「そよ香ちゃん、無理しないでね」
梓が心配そうな顔でそよ香の顔を覗き込む。
「大丈夫だって!ありがと」
いつもの笑顔を取り繕ってはみるが、
ザワザワとした心のモヤは晴れるはずもなかった。
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「ふぅ、お疲れ様〜」
無事にバイトを閉店までこなし、帰路に着く。
あれから寒気も増してきて、頭痛もひどくなってきた。
(これ完全に風邪引いた…)
明日が日曜日というのが救いだ。
自宅マンションのある最寄駅で電車を降り、
近くのコンビニで栄養ドリンクを数本購入して外に出る。
天気予報では、夜の気温は10度前後。
真冬のコートほどではないが、
1枚上着がないとまだ寒い。
もちろんそよ香もジャケットを羽織ってはいるが、
今はダウンコートでも着たいくらい
ガタガタと全身が震えてくる。
(最悪だ…頭も割れそうに痛い…薬あったかな)