【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第2章 嘘つき
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ランチタイム、ティータイムを終え
客足もひと段落した午後5時。
「なんか今日、寒くないですか?」
そよ香の一言にマスターと梓は顔を見合わせる。
「そうかな?今日暖房つけてないけど、
Tシャツ1枚で全然平気だよ!」
「俺も別に平気だけど…体調悪いのか?」
この寒気は自分だけだったことに気づき
最悪の事態を想定した。
「さっきからちょっと寒くて…
昨日仕事から帰ってそのままソファで寝ちゃったからかな?
アハハ…」
気のせいだと思いたかったが、
軽い頭痛も感じ始めていた。
「閉店まであと2時間くらいだし、
今日は上がっても良いよ?なぁ、梓ちゃん」
「はい!そよ香ちゃん、もうピーク過ぎたし
あとはマスターと2人で大丈夫だと思うよ」
じゃぁ、お言葉に甘えて…
そう言おうとした時、昨日のできごとが鮮明に蘇る。
そよ香がリビングの電気をつけた瞬間、
あいつは電話をかけてきた。
きっとどこかで見ていたんだ。
家も、連絡先も知られている…
そう思うと、1人でいる時間を出来るだけ短くしたい。